遺産分割協議の前に貯金を下ろしてもいいの?

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急に親族が亡くなった場合、まず考えることは病院などにかかった支払いのことでしょう。

思わぬ急な出費に、亡くなった人の口座から引き落とす……という話を一度は聞いたことがあるでしょう。

しかし、亡くなった人の預貯金は相続財産です。本人にかかった費用とはいえ、勝手に使ってもいいものなのでしょうか?

今回は、そんなよくある疑問を解説していきたいと思います。

こんな人におすすめです

  • 親の貯金から病院費用を払ってもいいのか知りたい
  • いくらまでなら下ろしていいか知りたい
  • どんなデメリットがあるか知りたい

2016年の判決で、「預貯金債権は遺産分割の対象に含まれる」と、従来の判決が変更されました。

以前までは、「預貯金は当然に分割されるため、自分の分は単独行使できる」とされていました。

それが、「遺産分割協議までの間は、共同相続人全員の同意を得なければならない」となったのです。

しかしこれでは困ります。入院費用などの急な支払いに対応できませんし、遺産分割協議には、かなりの時間がかかるからです。

そこで法律が改正され、現在(2024年4月)では、一定の額は自由に使うことができるようになりました。

預貯金は勝手に使えません!
ただし、一定額は許されることになりました。

法改正により、以下は家庭裁判所の判断を経ないで払戻しができることとなりました。

  • 貯金額×1/3×法定相続分
  • 一つの金融機関につき150万円までが限度

上記の1と2は、同時に満たす必要があります。

例えば、母が亡くなり、兄弟二人が残されたとします。

母の貯金がA銀行1200万円、B銀行300万円だった場合、

兄が引き出せるのは、

A銀行:1200万円×1/3×1/2=200万円  ただし、150万円が限度なので、A銀行は150万円

B銀行:300万円×1/3×1/2=50万円   150万円に満たないので、B銀行はそのまま50万円

となり、A銀行150万円、B銀行50万円の合計200万円が引き出せる限度額となります。

一つの銀行につき150万円までです。

当然のことながら、遺産分割協議前に貯金を下ろした金額は、相続財産から差し引かれます。

法律では、貯金を下ろす権利を行使したことで、遺産を一部分割して取得したとみなすからです。

病院費用などを下ろす場合は、勝手に使い込んだのではないことを証明できるよう、あらかじめ了承を得て、証跡を残しておきましょう。

また、貯金を引き出した場合、「財産を処分した」とみなされます。

この場合、もしも亡くなった人に多額の借金があった場合に相続放棄できなくなります。

相続放棄には、「財産を処分していないこと」という条件があるからです。

親が借金などをしている場合、亡くなった後に貯金を下ろすのは要注意です。

相続放棄する可能性がある場合は要注意です!

まとめ

  • 使っていいのは一つの銀行につき150万円まで
  • 相続放棄できなくなる

以上のことだけは絶対に意識しておきましょう。

特に相続放棄ができなくなるデメリットはとても大きいです。

ただし、葬儀費用は相続財産に含まれないため、葬儀のために貯金を使う分には問題ありません。

他にも、亡くなった人の貯金のことで気になることがありましたら、下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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